OM-1が帰ってきた。
今から約47年前。高校に入学した私は写真部に入部した。
当初は親父が持っていた、トプコン「UNI」という一眼レフを借りて撮っていたのですが、このカメラはとても使いづらく、父に相談したところ・・
「オリンパスのOM-1なら、小さくて自分も使えそうだから、そのカメラで良ければ半額出してやる。」と言われ、当時わずかなアルバイトしかしていなかった私は、この提案に飛びついたのです。
そうして初めて自分で手に入れた(半額ですが)カメラが「オリンパスOMー1(シルバー)ズイコー50㎜ F1.8の標準レンズ付き」でした。(黒ボディと50㎜F1.4付が欲しかったのですが、父に「贅沢だ!」と言われ、そのときは断念!・・・。後年やっと50㎜F1.4を購入しました。)
大学生になってからも写真部に入り、しだいに24㎜レンズから300㎜レンズまで各種買い揃え、OM-2のボディも加わり、卒業後も合わせると通算約10年、OMシリーズを愛用していました。
その後、大鑑巨砲主義的なカメラにあこがれ、キヤノンF-1にモータドライブを装着し、重くでかいカメラを振り回し、ガチャガチャと撮る日々を長く続けていたので、オリンパスOM-1の出番は、ほとんど無くなっていました。
そして兄夫婦に子供が生まれたお祝いにと、OM-1とOM-2をあげてしまった記憶があります。
ところが先日、実家に帰った際、母親が「これ返すね」と言って、OM-1シルバーを奥から出してきました。兄夫婦も使わなくなったものを、母が保管していたのでしょう。
なんと約30数年経った今、また私の元に初めて自分で手に入れた、まさにそのカメラが戻ってきたのです。
そのカメラを手にしたとき、自分の動作に驚きました。
シャッターリング、絞り、ピントリングなど、ほとんど無意識のまま手先が反応し、的確に操作していくのです。
考えてみれば、高校~大学卒業までの期間が私の人生の中で、最もフィルム本数を消費し撮影に熱中した時期だったのです。(最も多い時期で年間200本ほど撮ってました。)
OM-1の扱いが体に染み着き、30数年経った今でも手先はその感覚を覚えていたのですね。
若い時の写真に対する情熱までフラッシュバックし、俄然このカメラで写真が撮りたくなりました。
OM-1というカメラ
今、改めてOM-1を使ってみると、「名機だなぁ」とつくづく感じます。
- 左手だけで、シャッター速度、絞り、ピントが瞬時に操作できる。(シャッターダイヤルがレンズマウント部にあるから)
- 右手は、シャッターと巻き上げに専念できる。
- 上記1.2.が示すことは、撮影中に手を持ち替える必要がないということ。(マニュアルカメラを使ったことがない人は、このことがピンとこないかも)
- 巻き上げ感覚がとても軽快でスムーズ。
- ファインダー倍率が等倍(50㎜装着時)で、両目をあけたままピント合わせや、フレーミングができる。
- シャッター音が小さく優しい。
- カメラが小型なので、スナップでは人物に警戒心を与えない。
- 重量が軽いので、カメラを持ったまま何キロでも歩ける。
つまり、スナップ撮影には最適なカメラなのです。
加えて、細かな部品にまで金属が使用されており、おもちゃっぽさは全く感じない。道具としての満足感も高いのです。
その後、各社プラスチックボディのカメラが続々と発売され、シャッター音も大雑把なものになり、巻き上げ感覚もゴリゴリとしたカメラが一挙に増え始めました。
そんなカメラを経験してきた後、このカメラに触れると本当によくできているカメラであると、実感できます。
一緒に戻ってきた50㎜ F1.4レンズは、バルサム剥がれができてしまって内面反射が強く、逆光写真では苦労しそうですが、オールドレンズらしく、開放絞りと絞り込んだ時の描写の違いが楽しめます。
その後、やはり学生の頃よく使っていたZuiko 28㎜ F3.5を新宿の中古屋さんで新たに購入し、その実力に改めて感心しながら、わくわくする撮影の日々を楽しんでいます。
しばらくOM-1での撮影が続きそうです。