親子3代の誕生を記録したカメラ
私が生まれたのは1958年。父が赤ん坊だった私を写したのが、「リコーフレックス ダイヤ」。
1955年発売。当時の価格で9,800円。大卒公務員の初任給が8,700円という時代でしたから、カメラがまだまだ高値の花という時期に、庶民に優しい価格のカメラとして、かなり人気があったらしいです。
父は私が30歳の時に亡くなったので、父の遺品のような思い入れがあり、大事に保管してきました。
その後も時折持ち出しては家族や風景など撮影していましたが、ここ数年(十数年?)すっかり保管庫の隅に押しやられ、日の目を見る機会がありませんでした。
2020年、私に孫が生まれたのを機に、ふとこのカメラを思い出し、孫を撮ってみました。
このカメラは完全機械式カメラで、作動に電池など使用していません。保管状態が良ければ、100年でも使うことができるでしょう。
元気でいれば、ひ孫を撮ることもできるかもしれません。
一度だけ、不具合(シャッターチャージするとシャッター羽根が開いてしまう)が発生しましたが、自力で分解・修理することができました。
そんなことができるのも、機械式カメラの良いところです。
60年以上も前で、しかも庶民的な製品ですから単なるノスタルジー的カメラと思いがちですが、撮ってみるとその実力が意外と素晴らしいのに気が付きます。
リコーフレックス ダイヤというカメラ
リコーさんは、自社の旧製品をいまだにすべて紹介しているので、詳細は上記のオフィシャルサイトで確認できます。
私の感想ですが・・
1.リコーアナスチグマット80㎜/F3.5レンズの描写力が素晴らしい。
・解像力(シャープネス)が良い。
・カラーの再現性(発売当時は白黒が主体でした)もとても良い。
・ボケ味が素直で、シャープながらも優しい描写。
2.唯一無二の、フォーカスレバー方式。
・レンズの左右に突き出たレバーでピント合わせをする。
・微妙なピント調節がしやすい
3.シャッターが、レバー式なので手振れが少ない。
・二眼レフはミラーは動かないので、ミラーショックが無い。加えてこのカメラはシャッターを横にわずかに動かすだけでシャッターが切れるので、手振れの心配は少ない。
4.レンズの周辺に各機能が集約されているので、操作は少々やりづらい。
・シャッタースピードの操作時に、絞りやシャッターを誤操作することがある。
そもそも、二眼レフカメラは上から覗いてお辞儀しているような恰好で撮影する。
しかもピントスクリーンには左右反対に映し出されるので、慣れるまで時間がかかる。
さらには露出計無しのマニュアルカメラなので、①別の露出計で露出を測り、②シャッタースピードを合わせ、③絞りを合わせ、④ピントを合わせ、⑤シャッターチャージをし、⑥シャッターを切る・・・という動作が必要なので、気軽にパシャパシャ撮るという撮影には向いていない。
また、1本で12枚しか撮影できない(しかもフィルム交換も大変)なので、必然的に、対象を選びじっくり向き合って撮影するということになる。
シャッターレバーを押すと、レンズシャッター特有の「チャッ!」という静かな音とともにシャッターが切れる。この瞬間が、なんとも至福なひとときなのです。
露出計内蔵の35㎜一眼レフとは、趣の異なった撮影行為なのです。
不便なカメラのようであるが、機械好きの私にとっては一連の動作を楽しみながら、のんびりと撮影ができるとても貴重なカメラです。
「リコーフレックスダイヤ」は、当時の高級機「ローライフレックス」などと比べると、性能や価格に大きな開きはあるかもしれませんが、こと写りに関してはとてもコスパが良いと言えるのではないでしょうか。
今でもローライフレックスは中古でもかなり高価ですが、リコーフレックスは良品でも数千円で手に入るのではないでしょうか。
私、私の子供、そして孫と3世代にわたり記録できた貴重なカメラです。
そしてこれからも、作品作りにも活躍できるカメラと思っています。